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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1948号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

上告人平井光一上告趣意第二點について。

原判決が、判示第二の銃砲等所持禁止令違反の事実を認定する證據として、所論の證據を擧示していること及び原審第二回公判調書によれば、原審が押収にかゝる歩兵銃の発射機能等に關し鑑定人を尋問していることは、所論のとおりである。辯護人は右鑑定の結果を證據として引用していない原判決には、理由不備の違法がある旨主張している。しかし、すでに原判決が判示した「訓練用三八式歩兵銃」は、それが銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號にいわゆる「弾丸発射の機能を有する装藥銃砲」に該當することは常識上明白であると言い得るのみならず、原判決が證據の一つとして「押收してある訓練用三八式歩兵銃」の存在を擧げているのは、原審が鑑定人を尋問している點に鑑み(鑑定の結果は、押収の歩兵銃が前記規則第一條第一號の要件を具えたものであることを認めている)、前記歩兵銃が前記規則第一條第一號に規定する発射機能を有する装藥銃砲に該當する趣旨で引用したものと認め得るから、特に前記鑑定の結果を證據に引用しなかったからといって、理由不備の違法があると言うことはできない。原判決の擧示する證據で、判示事実を認定したことは肯認し得るところである。論旨は、それ故に結局事実認定を非難するに歸し、上告適法の理由とならない。

よって、舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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